今年もまた確定申告のシーズンがやってきました。
住宅を購入する際には、金融機関の住宅ローンを利用される方が増えています。
住宅ローンで新築住宅を取得した場合には、一定の要件に当てはまれば所得税の税額控除を受けられます。
しかし、どのような手続きが必要となるのか、なかなかわかりにくいですよね。
そこで今回は、住宅ローン控除を受けるための要件や控除額の算出方法などを解説します。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して自宅を新築、購入あるいは改築した個人が所得税の負担を軽減するための税制優遇制度です。
また、住宅ローン控除を受けるには、複数の要件を満たす必要があります。
さらに、初年度に限り確定申告が必要です。
確定申告にて「還付申告」を行うことで、住宅ローン残高の0.7%にあたる税金が最大13年間にわたって還ってきます。
確定申告は初年度のみ
住宅ローン控除を利用して新築住宅を購入または改築した場合は、初年度に確定申告を行う必要があります。
確定申告の対応時期は、毎年2月16日~3月15日が一般的です。
確定申告を行うことで、年末時点の住宅ローン残高に基づいて所得税を控除できます。
電子申告(e-Tax)を活用すれば、確定申告の手続きをスマホやインターネットからでも対応が可能です。
また、2年目以降は、一般的には勤務先の年末調整で処理されます。
ただし、個人事業主のように年末調整の対象外となる場合は、2年目以降もご自身での確定申告が必要です。
確定申告の流れ
住宅ローン控除に伴う確定申告の大まかな流れは、以下のとおりです。
- 確定申告の必要書類を用意する
- 期間内に申告書類を管轄の税務署に提出する
- 確定申告時に指定の口座へ還付金が振り込まれる
住宅ローン控除の確定申告では、一般的な確定申告書類に加えて「住宅に係る書類」も求められます。
また、控除に伴う還付金を受け取る場合には、金融機関や口座番号の記入も必要です。
手順に不安を感じる場合には、税務署の相談サポートも有効活用しましょう。
住宅ローン控除の適用期間
住宅ローン控除の適用期間は、最長で13年間です。
住宅の新築や購入だけでなく、一定の改修を施した場合にも特例が適用されることもあり、対象となる住宅によって期間が異なります。
住宅の種類 | 控除期間 |
---|---|
一般住宅を新築・取得 | 13年 |
認定住宅を新築・取得 | 13年 |
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得 | 13年 |
買取再販住宅または買取再販認定住宅等を取得 | 13年 |
中古住宅を取得 | 10年 |
上記は国税庁のページを参考に、住宅ローン控除の適用期間をまとめた表です。
住宅ローン控除を受けるための要件
住宅ローン控除を受けるための要件について、以下3つのパターンに分けて解説します。
- 一般住宅を新築・取得した場合
- 認定住宅を新築・取得した場合
- ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得した場合
一般住宅を新築・取得した場合
一般住宅を新築・取得した場合は、以下の要件に適合することで住宅ローンの控除を受けられます。
- 住宅取得後6ヶ月以内に入居し、引き続き居住していること
- 家屋の床面積(登記面積)が50㎡以上であること(※)
- 床面積の2分の1以上が、自己の居住用に供されるものであること
- 民間の金融機関や独立行政法人住宅金融支援機構などの住宅ローン等を利用していること
- 住宅ローン等の返済期間が10年以上で、分割して返済するものであること
- 控除を受ける年の所得金額が2,000万円以下であること
※:令和5年12月31日までに建築確認を受けたものに限り、家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満であっても控除を受けられます。
ただし、控除を受ける年の所得金額が1,000万円以下であることが条件です。
認定住宅を新築・取得した場合
認定住宅を新築・取得した場合は、以下の要件に適合することで住宅ローンの控除を受けられます。- 住宅取得後6ヶ月以内に入居し、引き続き居住していること
- 家屋の床面積(登記面積)が50㎡以上であること(※)
- 床面積の2分の1以上が、自己の居住用に供されるものであること
- 民間の金融機関や独立行政法人住宅金融支援機構などの住宅ローン等を利用していること
- 住宅ローン等の返済期間が10年以上で、分割して返済するものであること
- 控除を受ける年の所得金額が2,000万円以下であること
- 長期優良住宅建築計画の認定通知書(または低炭素建築物新築等計画の認定通知書)および住宅用家屋証明書などにより証明されたものであること
※:令和5年12月31日までに建築確認を受けたものに限り、家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満であっても控除を受けられます。
ただし、控除を受ける年の所得金額が1,000万円以下であることが条件です。
認定住宅でも、一般住宅と同様の要件を満す必要があります。
また、認定住宅の証明書が必要となることも認識しておきましょう。
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得した場合
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得した場合は、以下の要件に適合することで住宅ローンの控除を受けられます。
- 住宅取得後6ヶ月以内に入居し、引き続き居住していること
- 家屋の床面積(登記面積)が50㎡以上であること(※)
- 床面積の2分の1以上が、自己の居住用に供されるものであること
- 民間の金融機関や独立行政法人住宅金融支援機構などの住宅ローン等を利用していること
- 住宅ローン等の返済期間が10年以上で、分割して返済するものであること
- 控除を受ける年の所得金額が2,000万円以下であること
- 住宅省エネルギー性能証明書または建設住宅性能評価書などにより証明されたものであること
※:令和5年12月31日までに建築確認を受けたものに限り、家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満であっても控除を受けられます。
ただし、控除を受ける年の所得金額が1,000万円以下であることが条件です。
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅の場合も、一般住宅と同様の要件を満す必要があります。
また、証明書が必要となることも認識しておきましょう。
住宅ローン控除額の算出方法
住宅ローン控除額の算出方法について、以下3つのパターンに分けて解説します。
- 一般住宅を新築・取得した場合
- 認定住宅を新築・取得した場合
- ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得した場合
一般住宅を新築・取得した場合
一般住宅を新築・取得した場合は、以下の計算式で控除額を算出できます。
控除額 = 年末の住宅ローン残高(最大3,000万円まで) × 0.7%
住宅ローン残高に「最大3,000万円まで」の上限があるため、年間の控除額は最大で21万円です。
年末の住宅ローン残高に基づいて計算され、最大13年間適用されます。
認定住宅を新築・取得した場合
認定住宅を新築・取得した場合は、以下の計算式で控除額を算出できます。
控除額 = 年末の住宅ローン残高(最大5,000万円まで) × 0.7%
住宅ローン残高に「最大5,000万円まで」の上限があるため、年間の控除額は最大で35万円です。
年末の住宅ローン残高に基づいて計算され、最大13年間適用されます。
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得した場合
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得した場合は、以下の計算式で控除額を算出できます。
ZEH水準省エネ住宅の取得に係る住宅借入金等特別控除の特例を受ける場合
控除額 = 年末の住宅ローン残高(最大4,500万円まで) × 0.7%
住宅ローン残高に「最大4,500万円まで」の上限があるため、年間の控除額は最大で31.5万円です。
年末の住宅ローン残高に基づいて計算され、最大13年間適用されます。
省エネ基準適合住宅の取得に係る住宅借入金等特別控除の特例を受ける場合
控除額 = 年末の住宅ローン残高(最大4,000万円まで) × 0.7%
住宅ローン残高に「最大4,000万円まで」の上限があるため、年間の控除額は最大で28万円です。
年末の住宅ローン残高に基づいて計算され、最大13年間適用されます。
住宅ローン控除の確定申告に必要な書類
住宅ローン控除額の確定申告に必要な書類について、以下3つのパターンに分けて解説します。
- 一般住宅を新築・取得した場合
- 認定住宅を新築・取得した場合
- ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得した場合
認定住宅やZEH住宅では、それぞれの性能を証明する書類も必要となるため事前にチェックしておきましょう。
一般住宅を新築・取得した場合
一般住宅を新築・取得した場合は、初年度の確定申告に以下の書類が必要です。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 家屋の登記事項証明書
- 住宅の工事請負契約書の写しまたは売買契約書の写し
- 土地の売買契約書の写しおよび土地の登記事項証明書(※1)
- 市区町村からの補助金決定通知書など補助金等の額を証する書類(※2)
- 贈与税の申告書など住宅取得等資金の額を証する書類の写し(※3)
※1:土地の購入に係る住宅ローンについて控除を受ける場合
※2:補助金等の交付を受けた場合
※3:住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合
認定住宅を新築・取得した場合
認定住宅を新築・取得した場合は、一般住宅と同様に以下の書類が必要です。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 家屋の登記事項証明書
- 住宅の工事請負契約書の写しまたは売買契約書の写し
- 土地の売買契約書の写しおよび土地の登記事項証明書(※1)
- 市区町村からの補助金決定通知書など補助金等の額を証する書類(※2)
- 贈与税の申告書など住宅取得等資金の額を証する書類の写し(※3)
※1:土地の購入に係る住宅ローンについて控除を受ける場合
※2:補助金等の交付を受けた場合
※3:住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合
また、認定住宅の場合は、以下の区分に応じた書類も必要です。
認定長期優良住宅または低炭素建築物 | ①以下A~Cのいずれか A.都道府県・市区町村等の長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写し B.低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写し ②以下A~Bのいずれか A.市区町村の住宅用家屋証明書の写し B.認定長期優良住宅の建築証明書 C.低炭素建築物新築等計画の認定通知書 |
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低炭素建築物とみなされる特定建築物 | 市区町村の住宅用家屋証明書 |
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得した場合
ZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅を取得した場合は、以下の書類が必要です。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 家屋の登記事項証明書
- 住宅の工事請負契約書の写しまたは売買契約書の写し
- 土地の売買契約書の写しおよび土地の登記事項証明書(※1)
- 市区町村からの補助金決定通知書など補助金等の額を証する書類(※2)
- 贈与税の申告書など住宅取得等資金の額を証する書類の写し(※3)
- 建築士等の住宅省エネルギー性能証明書または登録住宅性能評価機関の建設住宅性能評価書の写し
※1:土地の購入に係る住宅ローンについて控除を受ける場合
※2:補助金等の交付を受けた場合
※3:住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合
住宅ローン控除の確定申告は計画的に対応しましょう
住宅ローン控除に伴う確定申告は、取得した住宅によって要件や控除額が異なります。
とくに認定住宅やZEH住宅では、確定申告の書類に「証明書」が加わることも考慮が必要です。
確定申告は初年度のみ実施すれば、翌年以降は年末調整にて対応できます。
しかし、慣れない手順に苦戦することもあるため、不安を感じたときは担当者まで遠慮なくご相談ください。